研究課題
抗酸化能をもつ植物化学物質(ファイトケミカル)の神経細胞への影響を、培養細胞、通常のラット及び老化促進マウス(SAMP10)で解析した。植物化学物質は赤ワインポリフェノールのレスベラトロールと米糠成分のキサントシンを用いた。培養細胞はPC12細胞を使用し、この細胞は本来腫瘍性であるが、NGFを短時間添加すると神経性の細胞に分化するため、レスベラトロールの未分化(腫瘍性細胞)と分化(神経細胞)PC12細胞への影響の相違を同じ起源の細胞で解析し、レスベラトロールはPC12細胞が腫瘍性の場合は障害的に作用し、神経性に分化した場合は神経突起伸展作用を示すことがわかり、PC12細胞の蛋白質の発現変化もこれに対応した。ケルセチン、クルクミン、ルチンなどの分化PC12細胞での神経突起伸展能は確認したが、未分化細胞との比較は今後検討する。レスベラトロールのSAMP10への影響については、35週令のマウスに20週投与した場合は、血清過酸化脂質や肝細胞の脂肪滴の減少に加えて、神経細胞では老化マーカーのリポフスチン顆粒の減少、老化で増加する細胞骨格系の蛋白質及び細胞死促進蛋白質の発現が減少し、老化で減少するシナプス関連蛋白質、活性酸素消去酵素及び細胞死抑制蛋白質が増加し、老化抑制効果を示した。しかし、レスベラトロールを6週令のSAMP10に30週投与した場合は、肝細胞では変化みられず、中枢神経細胞では障害的変化をもたらし、また死ぬ個体も有意に多かった。レスベラトロールのカロリー制限様作用から判断して、この物質の投与に関しては、年齢(成長期ではカロリーが必要であるが、老令ではカロリー消費が寿命延長と関連する可能性)や肥満関連疾患で左右されることが強く示唆され、今後の課題である。また、通常の6週令のラットにエタノールとキサントシンを40週同時に投与すると肝細胞に加え神経細胞のエタノール障害程度が有意に緩和され、キサントシンに神経細胞保護効果があることがわかった。
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