本年度はまずC末端にFLAG-tagを付加したヒトCav2.1をマウス内在性Cav2.1の代わりに発現するノックインマウスを用いて、Cav2.1C末端の生成に領域特異性があるかどうかを検討した。ノックインヘテロマウスの脳を大脳、小脳その他というように大まかに分画し、それぞれからタンパク質を抽出し、FLAG抗体による免疫沈降およびCav2.1C末端に対する抗体を用いたイムノブロットにより解析した。その結果、分子量約70kDaのCav2.1C末端フラグメントは小脳サンプルにおいてのみ検出された、各部位での発現量の差を補正しなければならないが、Cav2.1C末端の生成機構に領域特異性がある可能性が考えられ、SCA6におけるプルキンエ細胞の選択的脱落の機構との関連で非常に興味深い結果である。しかしこのフラグメントを質量分析等により解析し、切断部位についての情報を得るには膨大な量の出発材料が必要であると推定された。 C末端切断部位を同定する別のアプローチとして、データベースの検索からその切断配列の存在が推定されたcaspaselについて実験を進めた。すなわち、培養細胞に発現させたEGFP-Cav2.1融合タンパク質を免疫沈降により精製し、それを実際にin vitroでcaspaselで処理して、イムノブロットにより解析した。しかしC末端切断にcaspaselが関与することについては否定的な結果しか得られなかった。 また、Cav2.1C末端の生理機能を明らかにする一環として、Cav2.1C末端をCAGプロモータで発現するトランスジェニックマウスを作製した。現在このトランスジーンの発現量を調べている。
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