多くの細胞で強力な発現を示すことが知られるCAGプロモータ制御下でCav2.1カルボキシ末端(以下単にC末端と略)を発現するトランスジェニックマウスを作製した。導入したCav2.1 C末端は、ポリグルタミン鎖長が13と28の2種類のものを作製した。どちらのトランスジーンからもファウンダーマウスが得られたが、ポリグルタミン28の方が少なかった。また、どちらのトランスジェニックマウスも1系統がライン化されたが、いずれもC末端タンパク質の発現は非常に低いレベルであった。結局当初予定していた上記トランスジェニックマウスと、Cav2.1変異マウスleanerとの交配はできなかったが、上述の事実は、Cav2.1 C末端は多くの細胞に対して何らかの毒性を示し、それを高いレベルで発現すると致死になる可能性を示唆する。そしてポリグルタミン鎖長が13でも28でも毒性を示し、28の方が毒性が強いと推測される。 Cav2.1全長をHEK293細胞で発現させると、Cav2.1ノックインマウス小脳で検出されるのと同じサイズのC末端フラグメントが検出される。そこで、HEK293細胞とプルキンエ細胞(小脳内でC末端が多く存在すると考えられる)に共通して発現しているプロテアーゼをデータベースから検索し、それらをRNAiにより阻害した条件でC末端フラグメントの生成が影響されるかどうかを検討することとした。まず解析すべきプロテアーゼ遺伝子として、caspase 6、cathepsin L、calpain small subunit 1を選んだ。これらに対するsiRNAとCav2.1発現ベクターとを同時にHEK293細胞に導入して、その3日後に細胞を回収し、C末端タンパク質をウエスタンプロットにより調べた。しかし、今のところこれらのプロテアーゼがC末端生成に関わるという証拠は得られていない。siRNAの導入時期等の検討すべき点はまだ残るので、今後さらに検討したい。
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