研究概要 |
本年度は以下の3点について検討した。1. Cav2.1カルボキシ末端フラグメント(Cav2.1CT)生成機構 昨年度に引き続きいくつかのプロテアーゼに着目し、それらのCav2.1CT生成への関与を検討した。caspase6,cathepsin L,calpain small subunit 1を対象とし、これらに対するRNAiをHEK293細胞において行いCav2.1CTの生成が抑制されるかどうかをイムノブロットにより検討した。しかし、siRNAとCav2.1発現ベクターを同時に導入するとチャネルの発現効率自体が低下するといった問題が生じ、明確な結論を得るまでには至らなかった。2. Cav2.1CTとHSFIとの相互作用 GFP-Cav2.1CT融合タンパク質を恒常的に発現するHEK293由来細胞株(S13,L24)は重金属ストレスを与えると、ポリグルタミンの長いCav2.1CTを発現するL24の方が細胞死を起こしやすい(Li et al., 2009)。そして、この脆弱性にはHSF1-HSP70系の活性低下が関与すると考えられているがCav2.1CTがどのようにHSF1-HSP70系に影響するかは明らかではない。そこでCav2.1CTが転写因子HSF1と直接的に相互作用するかどうかを免疫沈降法を用いて検討した。S13,L24細胞の総タンパク質を抽出し、Cav2.1CTをGFP抗体で免疫沈降させ、HSF1抗体によるイムノブロットで解析した。しかしHSF1が検出できる時とできない時があり再現性について問題があった。現時点ではCav2.1C末端フラグメントとHSF1とが直接相互作用する可能性が考えられるが、明確な結論を得るにはさらなる検討を要する。3. Cav2.1CTの転写活性化能、転写抑制能 Cav2.1CTが転写活性化能を持つかどうかをGAL4 DNA結合ドメインとCav2.1CTとの融合タンパク質を発現するベクターを作製して検討した(pM3'S13,pM3'L24と名付けた)。レポーターとしてUAS配列下流にアルカリフォスファターゼ(SEAP)遺伝子を持つpG5SEAPをCOS7細胞にコトランスフェクションし、3日後SEAP活性を測定した。しかしCav2.1CT単独ではSEAP活性は検出されなかった。ところが、転写活性化能を有する陽性対照pM3VP16とpM3'S13あるいはpM3'L24を同時に導入すると、pM3VP16単独の場合に比べて著しくSEAP活性が低下した。Cav2.2のC末端を用いた場合にはこれほどの転写抑制は見られなかった。したがってCav2.1C末端は転写抑制活性を有する可能性が考えられる。
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