マウス卵でのSTIMおよびOraiタンパク質の発現のWesternプロットによる確認を試みたが、用いた抗体では検出できなかったため、平成22年度は当初計画していたRNAiによる発現抑制実験は行わず、STIM/Orai間の相互作用を検証する目的で、STIMとOraiのドメイン変異体の発現がマウス卵でのCa^<2+>オシレーションに及ぼす影響について詳細に検討した。その結果、(1)STIM1、STIM2、Orai1のC末端細胞質ドメイン欠損変異体(STIM1-ΔCT、STIM2-ΔCT、Orai1-ΔCT)、および(2)STIM1、STIM2の細胞質ドメイン(STIM1-CT、STIM2-CT)の何れを発現させた場合も、PLCζによって誘発されるCa^<2+>オシレーションが抑制された。また、STIM1-CTではオシレーション開始後の頻度が低下したのに対し、STIM2-CTでは最初のCa^<2+>反応の振幅の減少および遅延もみられた。以上の結果は、マウス卵受精時のCa^<2+>オシレーションにおいて、STIM/Orai系によるCa^<2+>流入の活性化が起こっていること、さらに、STIM2は静止時のCa^<2+>入の調節にも関与していることを示唆している。STIM/Orai系によるストア作動性Ca^<2+>流入については、多くの体細胞では報告されているが、上記の成果は、それが卵細胞でも機能しており、受精時のCa^<2+>オシレーションの発生・維持に実際に寄与していることを示したという点で重要であると考えられる。
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