研究概要 |
平成23年度は1)分岐式イメージングファイバ(Branch type-Imaging Fiber,B-IF)の基本光学性能の改良、2)B-IFを用いた膵β細胞ならびに多臓器機能の同時測定モデルの構築を行った。 B-IFの基本性能を向上するために、22年度までに達成したIFの光学仕様(素線数、開口数、ミニレンズ性能)に改良を加えた。ファイバ素線は1.5ミクロン縦横各128(約1.6万本バンドル構成)、視野を直径300ミクロンとした。IF先端に設置する専用のミニレンズは、倍率2倍、作動距離0.5ミリ、波長470~640nmの色補正した。IFを4分岐させ、各IF先端部を生内に長期間滞留しておくための留置カテーテルを製作し、ホルダに装着・保持して生体内視鏡とし、空間分解能は1ミクロン、時間分解能は毎秒30枚で、膵β細胞顆粒の解像ならびにインスリン放出の検出を試行した。 膵β細胞の観察は、麻酔下ラットにおいてB-IFを腹腔内へ挿入、先端を腺尾部領域へ近接させて行った。腺β細胞は2種類の蛍光色素で標識し、一方の蛍光色素は焦点調整用、他方は分泌測定用とすることでβ顆粒に対する光毒性を軽減した。β顆粒は高輝度スポットの集団として画像化できた。グルコース刺激に対する蛍光強度変化を計測したところ、数本のファイバ素線にわたる範囲において、グルコース刺激してから30秒後から数分間にわたって強度の急激な低下が検出された。強度の変化率は観察部位によって異なっていた。以上の結果から、複数のβ顆粒における開口放出反応を計測したと推察された。1時間以上の長時間にわたる連続モニタリングも試みたが、同一部位では最長で20分だった。出血等による励起光率の低下は防げたが、同一視野の確保が困難だった。膵β細胞だけでなく、関連臓器の形態機能の同時観察も試みた。肝細胞のCa応答、腎糸球体や小腸絨毛の微細構造を観察することができ、多臓器同時モニタリングへの有用性も確認できた。
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