過分極で活性化される陽イオンチャネル(HCNチャネル)は、心臓におけるペースメーカー細胞で1980年に初めてその電流が記録されて以来、中枢神経系をはじめ生体内の様々な場所に発現し、ペースメーカーチャネルとしての役割や細胞の興奮性の調節など生理学的に重要な役割を果たしていることが明らかとなってきた。HCNチャネルは、電位依存性カリウムチャネル(Kvチャネル)と共通の6回膜貫通領域をもつが、特徴的な性質がある。過分極によりゆっくりと活性化する。cAMPによって電位依存性が調節を受ける。これらの特徴を引き起こす分子レベルでの構造的基盤を明らかにするために研究を行った。 今年度は、チャネルが開くのための電位センサーの役割を明らかにするために、4つのサブユニットをタンデムにつなぎ合わせたチャネルを作製した。そして、動くことができる電位センサーの数を4つから減少させたチャネルを作製し、その電流応答を測定することに成功した。動くことができる電位センサーの数を野生型の4つから、3つ、2つ、1つと減少させても電流応答は観察することができ、また、その電流応答の活性化速度は動くことができる電位センサーの数が減少するにつれ速くなることが観察された。今後はこれらのチャネルの活性化速度を詳細に解析し、活性化のモデルを構築し、電位センサーとチャネルゲートのカップリング機構を解明する。また、cAMPのチャネルに対する効果を測定しカップリング機構に対する修飾機構を明らかにする予定である。
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