過分極で活性化される陽イオンチャネル(IICNチャネル)は、心臓におけるペースメーカー細胞で1980年に初めてその電流が記録されて以来、中枢神経をはじめ生体内の様々な場所に発現し、ペースメカーチャネルとしての役割や細胞の興奮性の調節など生理学的に重要な役割をはたしていることが明らかとなってきた。HCNチャネルは、電位依存性カリウムチャネル(Kvチャネル)と共通の6回膜貫通領域をもつが、過分極によりゆっくりと活性化するという特徴的な性質がある。この特徴を引き起こす分子レベルでの構造的基盤を明らかにするために研究を行った。 HCNチャネルでは電位センサーと考えられている第4膜貫通領域(S4)とチャネルのゲートであると考えられている第6膜貫通領域(S6)のアミノ酸残基の間で相互作用があることが示されている。また、HICNチャネルは4量体であると考えられている。S4とS6との相互作用が一つの分子内の相互作用か、あるいは二つの分子内の相互作用かを明らかにするために研究を行った。 二つのサブユニットをタンデムにつなぎ一つのサブユニットにはS4が動くことの出来なくなる変異を導入し、一つのサブユニットのS4の動きの伝わり方を、S4とS6との相互作用をしていると考えられているアミノ酸残基に変異を導入し、検討を行った。それらの結果から、S4とS6との相互作用はサブユニット間の相互作用が示唆されることが明らかとなった。
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