研究概要 |
Atpla3欠損マウスの神経機能に関わる表現型の解析として下記の点を明らかにした。 1 ホームケージ活動量は、Atpla3欠損ヘテロマウスにおいて、野生型よりも有意に増加していたが、摂食量については,有意差が認められなかった。 2 恐怖不安行動や新規探索傾向には有意差がなかったが、活動量はヘテロマウスで増加していた。また、ロタロッドやバランストビームでは、ヘテロマウスはより早期に学習が成立するが、最終的な運動能力には有意差がなかった。ホームケージでの運動量の差と関係する可能性も考えられた。 3 行動テスト後に脳を採取し、連続切片を作成後c-fosの発現を抗体染色にて観察したところ、顕著な違いは見られず、行動の違いがどのような神経基盤によるのかについては、別のアプローチが必要であると考えられた。 4 小脳のLTDには違いが見られなかったが、平行繊維からプルキンエ細胞へのPPFやI=0関連の結果には違いがあり、ヘテロマウスでは、神経伝達物質の放出効率が低下していると考えられた。一方ホモマウスの異常については下記の2点が明確にできた。 1 神経伝達物質のうちドーパミンとノルアドレナリンについては、ホモマウスの脳内含量が有意に増加していた。 2 E15.5以降の胚においては、ホモマウスの脳においてc-Fosの発現が亢進する領域が見られる。また、脳室の拡大などの形態的な違いも、みつかりつつある。特にα2α3二重欠損マウスにおいては、この傾向が顕著であった。
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