細胞内の水輸送の役割をあきらかにする目的で細胞内水チャネルであるAQP11に注目して研究をすすめている。この水チャネルをのノックアウトしたマウスでは腎臓の尿細管細胞の細胞内に空胞が形成され、その後嚢胞腎になって腎不全で死ぬ。この空胞の形成されるメカニズムについて検討した。 腎臓と肝臓(門脈周辺の肝細胞でも空胞が形成される)に細胞内空胞がみられる機構の解明の目的でそれぞれの臓器でAQP11欠損マウスと非欠損マウスの遺伝子の発現をRNAレベルで比較するマイクロアレイを生後3日、生後30日の腎臓でおこない、ともにエンドソーム関連遺伝子の低下を認めた。細胞内空胞の多くはエンドソームに由来することがオルガネルマーカーの染色であきらかになった。また生後6日の肝臓では鉄代謝に関連した遺伝子の発現の変化がみられた。腎臓であきらかになっていた小胞体ストレスに関連した遺伝子の発現の変化は肝臓では認められず、腎臓と肝臓での細胞内空胞の形成機構に違いがある可能性が示唆された。 腎臓蛋白の2次元電気泳動によってノックアウトマウスのであきらかに増加したスポットを3つ同定し、2つは蛋白も同定できた。そのうちの1つは小胞体ストレスによると考えられるヒートショック蛋白の1つであった。もう1つは他の嚢胞腎マウスで増加している蛋白であり、原因はちがっても嚢胞形成に共通性があることが示唆された。 以上のようにAQP11欠損で変化する分子がいくつか同定できたので今後これらをあしがかりにして研究をすすめたい。
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