研究概要 |
我々はマウス中大脳動脈閉塞モデルにて血管内皮細胞に発現したウロキナーゼレセプター(uPAR)の遺伝子欠損により脳梗塞が縮小することなどから、uPARがウロキナーゼ非依存的に脳梗塞を増悪することを認めた。さらに、平成21年度の研究より、uPARが血管透過性の亢進を介して脳梗塞の増悪をきたす可能性が示唆するとともに、新たに確立した定量脳傷害モデルを用いてuPARが慢性期の病態生理学的プロセスに影響を及ぼさないことを明らかにした。 脳梗塞に伴う血管透過性の亢進のメカニズムには不明な点が多いが、脳梗塞に伴い新たに形成された脳血管は血管透過性が高いことが報告されている。そこで我々は、本定量脳傷害モデルを用いて傷害1日後に胚性幹細胞(ES細胞)の移植を行い、血管新生に及ぼす影響を検討した。その結果、傷害1週間後に傷害周囲で著しい血管の新生が認められること、その数がES細胞の末梢循環中への移植により増加することを示した。また、これらの新生血管はES細胞由来ではなく内因性の細胞に由来することを明らかにした(Nagai et al. NeuroReport 2010)。さらに脳傷害後の新生血管の透過性は傷害内部で高いことも認めた。 一方、uPARの発現の抑制が癌に伴う血管新生を抑制すること(Malia RR et. al, Caner Gene Therapy 2011)が昨年報告されたことから、脳傷害後に血管内皮細胞で発現したuPARが血管透過性を亢進するメカニズムとして、傷害部位での血管新生プロセスに寄与している可能性が示唆された。
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