NCS-1(Neuronal Ca^<2+>sensor-1/Frequenin)は興奮性細胞特異的に発現するCa^<2+>センサータンパク質であり、イオンチャネルの制御などを行なうことにより、神経機能に重要な役割を担っていることが知られている。NCS-1は神経のみならず、特に未成熟期の心臓にも高発現していることを明らかにしてきたが、心臓におけるNCS-1の役割については不明であった。本研究で、NCS-1欠損(KO)マウスを用いて、NCS-1の心臓における生理的・病態的役割がはじめて明らかとなった。 NCS-1の遺伝子欠損(KO)マウスでは、新生児の約3割が死亡した。また生き残ったマウスにおいても幼少時期の心臓の収縮力、および細胞内Ca^<2+>トランジエントが60%まで低下していた。詳しい解析から、NCS-1は、心筋Ca^<2+>貯蔵部位であるSRから細胞内にCa^<2+>を放出するIP_3受容体と結合し活性化し、その局所のCa^<2+>上昇がCa^<2+>/カルモジュリン依存性キナーゼII(CaMKII)を活性化して細胞全体のCa^<2+>シグナルを増強させることにより、SRが未発達な幼少期の心筋収縮に寄与することが明らかとなった。一方、成体マウスの心臓においては、NCS-1は心肥大のような病態時に発現量が高くなり、ホルモン刺激による心肥大がKOマウスで生じにくかったことより、NCS-1が成体心の心肥大形成にも寄与することが示された。これらの知見は、小児科領域における心臓生理の理解のみならず、心肥大発症機構の解明などにも役立つことが期待される。
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