1.位相前進パラダイムにおける身体運動の効果 時間隔離実験室において、1晩の徹夜の後に通常の睡眠時間を8時間位相前進させる脱同調パラダイムを4日間行い、その後被験者の概日リズムをフリーランさせた。光同調を抑制する目的で、実験室の照度は10ルックス以下とした。自転車エルゴメーターによる1日4時間の身体運動を位相前進スケジュールの4日間被験者に負荷した。概日リズムの指標として血中メラトニンを1時間ごと24時間にわたり測定し、実験開始日、シフト最終日、フリーラン最終日のリズム位相を求めた。その結果、睡眠覚醒スケジュールの8時間位相前進にも関わらず、メラトニン概日リズムは位相後退し、24時間より長い周期でフリーランした。身体運動の有無による位相変位には有意な差は認められなかった。一方、睡眠覚醒リズムのシフトスケジュールへの再同調は、身体運動を負荷した被験者で有意に促進していた。睡眠覚醒リズムとメラトニンリズムは内的脱同調を示したが、フリーラン時に両者は再同調した。リズム再同調過程は2つのリズム位相差に依存し、特有の位相反応性を示した。これらの結果より、身体運動は睡眠覚醒リズムの再同調は促進するが、概日リズムには効果が少ない事が判明した。 2.低照度下におけるフリーラン周期 次年度に予定している8時間位相後退パラダイムの対象実験として、10ルックス以下の低照度下で10日間のフリーラン実験を行った。その結果、睡眠覚醒リズムでは7名中4名の被験者でリズム位相が後退したが、3名はほとんど後退しなかった。低照度下では、フリーラン周期がより24時間に近くなる可能性が示唆された。
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