研究課題
平成21年度、受容体型チロシンキナーゼのDown regulation(機能発現低下)の秩序維持機構に関与しているCIN85(Cbl-interacting protein of 85kDa)のノックアウト(KO)マウスの「哺育行動の欠如」における分子基盤について解析を行った。別の研究から、CIN85 KOマウスの脳内ドーパミン含量は野生型に比べて有意に高値であることが解っている。ドーパミンは「哺育・泌乳行動」に深く関与するプロラクチン(PRL)の抑制因子なので、出産後のCIN85 KO母マウスの血中PRL濃度を酵素抗体法を用いて測定した。野生型に比べてCIN85 KO母マウスの血中PRL濃度は約20%にまで減少していた。しかし、PRL減少による乳腺のホールマウント染色法による形成異常や成熟の遅延、乳汁タンパク質であるカゼイン測定による乳汁生産の低下などはみられなかった。行動学的解析では、CIN85 KO母マウスはPup-retrieving behavior testによって、新生仔に対する興味や離別の不安に対して野生型に比べ有意に低下していた。さらに、この現象はヘテロの母親から誕生したKOマウスでは見られず、ホモの母親から誕生したKOマウスからのみ観察された。これらの結果から、雌マウスの哺育行動には、胎生期の充分なPRL曝露が必要であることが推察された。以上の成果は受容体シグナルの調節因子であるCIN85が、ドーパミン-PRLシグナルを制御し母親の母性行動を調節していることを示唆している。
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