研究課題
受容体型チロシンキナーゼの機能発現低下の秩序維持機構に関与しているCbl-interacting protein of 85 kDa(CIN85)のノックアウト(KO)マウスの「哺育行動の欠如」における分子基盤について解析を進めた。CIN85KOマウスの脳内視床下部におけるドーパミン含量は野生型に比べて有意に高値であった。ドーパミンは「哺育・泌乳行動」に深く関与するプロラクチン(PRL)の抑制因子なので、出産後のCIN85 KO母マウスの血中PRL濃度を酵素抗体法を用いて測定した。野生型に比べてCIN85 KO母マウスの血中PRL濃度は約20%にまで減少していた。行動学的解析では、CIN85 KO母マウスはPup-retrieving behavior testによって、新生仔に対する興味が野生型に比べ有意に低下していた。また、PRLの減少にみられるanxiety(不安)はみられず、CIN85欠損による多動性や哺育行動の欠除に不安情動がマスクされていることが示唆された。さらに、この現象はヘテロの母親から誕生したKOマウスでは見られず、ホモの母親から誕生したKOマウスからのみ観察された。さらに、ホモの母親から誕生したKOマウスはPRLの投与によって哺育行動の改善が示されたが完全には修復されなかった。これらの結果から、雌マウスの哺育行動には、胎生期の充分なPRL曝露が必要であることが推察された。以上の成果は受容体シグナルの調節因子であるCIN85がドーパミン-PRLシグナルを制御し母親の母性行動を調節していることを示唆している。
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FEBS Letters
巻: 585 ページ: 1741-1747
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Neuroscience Letters
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http://nori3.dept.med.gunma-u.ac.jp/index.php?FrontPage