昨年度は、ヒト前骨髄球性白血病細胞株のHL-60細胞を牛乳カゼインまたはそのトリプシン分解物で刺激すると一過的な細胞内カルシウム濃度の上昇が見られること、この応答は百日咳毒素やホスホリパーゼC阻害剤で阻害されることから、Giタンパク質を介することを明らかにした。また、マクロファージ様に分化させたHL-60細胞の細胞内カルシウム応答を指標として、トリプシン消化カゼイン分解物の中から新規の血球細胞活性化ペプチドとしてαs1カゼイン由来のペプチドを同定した。 本年度では、このαs1カゼイン由来の血球細胞活性化ペプチドを合成し、この合成ペプチドによる応答が各種生理活性ペプチド受容体アンタゴニストでは阻害されないこと、細胞をカゼインで前処理すると脱感作されるが、現在までに報告されているカゼイン由来の生理活性ペプチドでは脱感作されないことを確認し、既知のカゼイン由来生理活性ペプチドや既知の作用機序を介して引き起こされるものではないことを確認した。また、本血球細胞活性化ペプチド配列の一部を改変したものや、N末端やC末端へ別のペプチドを連結したもの、N末端やC末端を削ったものを合成し、生理活性を比較したところ、最初に同定したペプチドが最も活性が高く、そのうちの一部の配列が活性発現に必須であることがわかった。
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