研究概要 |
我々はレンチウイルスベクターを導入したノックダウンマウスを複数作成し、その成果の一部を論文化した(2011)。当初は、複数遺伝子を同時ノックダウンしたマウスを作成する計画で研究を進めてきたが、ノックダウン効率や世代を経たノックダウンマウスの維持等に問題を生じたため、ダブルノックアウトマウスやコンディショナルノックアウトマウスの作成により、計画していた研究を実施することにした。 我々はまず、概日時計に必須であるBmal1遺伝子のfloxマウスと、神経と同様に概日時計機構の中心的役割を担う可能性があるアストロサイトで特異的に相同組み換えを起こすGFAP-Creマウスの交配により、アストロサイト特異的に時計遺伝子をKOしたマウス、即ち神経の概日時計は正常であるが、アストロサイトでは時計が機能しないマウスを作製した。このマウスの行動リズムを解析したところ、リズム周期や光同調機構の異常を見出した。このことから、体内時計におけるアストロサイトの関与が示唆された。この成果は現在論文を投稿中であり、この成果を基に新たに提案したアストロサイとリズムに関する研究提案が今年度のJSTさきがけに採択された。 続いて、体内時計による行動や代謝を制御する新たな遺伝子候補として、SIK遺伝子ファミリーに注目した。このリン酸化酵素は機能がよく分かっていないが、脳内の体内時計中枢や肝臓などで24時間周期で発現が変動しており、体内時計との関連が注目された。そこで、SIK遺伝子のノックアウトマウスを用いて、活動リズム、代謝リズムその他の解析を行った結果、マウスにおいて、活動や呼吸商のリズムに異常を見出すと共に、代謝の劇的な異常を観察した。更に、SIKによるリン酸化の異常が,時計遺伝子の発現リズム異常と相関していることも見出した。以上の成果を、2011年の解剖・生理学会合同シンポで発表し、また、2012年は、国際学会(SRBR)、神経科学学会等での発表、並びに、論文投稿を予定している。
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