研究課題
本研究では、発光タンパク質ルシフェラーゼをプローブに用い、発光イメージングという新しい細胞内局在の可視化テクニックを駆使することで、既存の技術では困難であった24時間周期で起こる時刻依存的な時計タンパク質の核-細胞質間シャトルの分子機構を解明することを目的とする。本年度は最初に、申請者らが独自に開発した発光イメージング用ルシフェラーゼ(ELuc)の物理化学的特性及び細胞内の特性について、最も汎用されているホタルルシフェラーゼ(FLuc)を比較対象に解析した。ELucは哺乳類細胞において、FLucよりも10倍以上強い発光を示すことが明らかとなっているが、この理由について解明するため、両ルシフェラーゼタンパク質を精製し、酵素学的特性について検討した。その結果、Km、Vmax、Kcat等の物理化学特性はFLucと比較して相違いは認めちれなかったが、ELucのin vitroでのdecay kineticsはFLucのそれよりも数倍遅いことが明らかとなった。更に、細胞内での特性について比較検討した結果、ELucの発現量及び安定性はFLucと比較し、各々数倍高いこと判明した。以上の結果より、ELucの持つdecay kinetics、高発現及び高安定性により、従来のルシフェラーゼに比し強発光を放つことが明らかとなった。続いて、発光イメージングにおいて、ELucと併用するための鉄道虫由来ルシフェラーゼの改良を行った結果、部位特異的変異を導入することにより、細胞内安定性及び発光強度を増加させることに成功した。更に、ELucと時計遺伝子mPer2と融合した融合タンパク質がmPer2プロモーターに支配下で発現するベクターを作製、これをマウズ繊維芽細胞NIH3T3に一過的に導入し長期発光イメージングを行った。その結果、融合タンパク質の核-細胞質間シャトルは観察されたものの、その周期は従来、免疫染色やwestern解析で報告されている結果とは異なったため、発現方法等を更に改良する必要があることが示唆された。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Protein Science 19
ページ: 26-33