モータータンパク質ミオシンは、アクチン繊維をレールとして滑り運動を行い、細胞における主要な力発生源となっている。アクチン繊維は細胞内で、ストレスファイバー、接着斑、フィロポディア、ラメリポディア、膜裏打ち等、様々な高次構造複合体を取る。現在、「裸状態のアクチン繊維」とミオシンとの滑り運動解析は盛んであるが、「高次構造複合体」とミオシンとの直接的な解析は殆どなされていない。そこで本研究では、一昨年度、昨年度とフィロポディア、ラメリポディア、ストレスファイバー、接着斑といった細胞内アクチン高次複合体に局在する主要構成タンパク質を用いてin vitroで疑似複合体を再構成し、これをレールとするミオシン1分子解析を行ってきた。その結果、「裸状態のアクチン繊維」と「疑似高次構造複合体」で、ミオシンの滑り運動が異なる事を示すことができた。今年度はin vitroの再構成レールよりもより生体に近い形のレールを作成しようと、細胞からのアクチン高次複合体の単離を試みた。PC12細胞を分化させた後、ローダミンファロイジンでアクチン繊維を安定化し、細胞を破砕、遠心により核分画を取り除き、さらに遠心で分画を行い、形態的にフィロポディアに酷似したアクチン束の単離に成功した。電気泳動ではまだ不純物を多く含んでいるが、アクチン構造を保っているので、アクチンレールとして使用できるものと思われる。今後、これをレールとしたミオシンの1分子解析を試みていきたい。
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