研究者らは、外向きK^+チャネルの障害で延長した心室筋細胞の活動電位をL型カルシウムチャネル(LTCC)阻害薬が効率的に補正することを見出した。そして、LTCC阻害薬が興奮収縮連関に対する作用を最低限に留めながら、活動電位短縮をきたすためには、LTCC阻害薬が活動電位中のLTCCの不活性化を促進することが重要であること、さらにこのためにはLTCC阻害薬がLTCCの開口状態に好んで結合することであることを予測した。 そこで本年度は、不活性化状態を障害する変異LTCCを用いて、LTCC阻害薬であるニフェジピンの開口状態親和性を検討しようとした。実験では、β_2およびα_2δサブユニットを恒常的に発現するHEK293細胞に、野生型α_1サブユニットまたは変異α_1サブユニット(G436R)を急性に発現させ、発現したLTCC電流をBa^<2+>をcharge carrierとしてパッチクランプ法のホールセルモードで測定した。 LTCC(G436R)は野生型LTCC(LTCC(Wt))と比較して、速い膜電位依存性不活性化(VDI)を失っていたが、ほぼ同等の遅いVDIを示した。また両者のニフェジピン感受性はほぼ同等であった。したがって、ニフェジピンは遅いVDIを安定化してLTCCを抑制すると考えられた。即ち、G436R変異を用いた検討では、LTCCの遅いVDIを阻害できないため、ニフェジピンの開口状態親和性を抽出し解析することができなかった。 この結果を踏まえ、来年度は遅いVDIの障害を有するLTCCに対するニフェジピンの効果を検討し、この阻害薬の開口状態親和性を判定する必要があると考えられた。
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