ジヒドロピリジン系(DHP)L型カルシウムチャネル(LTCC)阻害薬ニフェジピンは、延長した心室筋細胞の活動電位をポテントに短縮する。このためには、ニフェジピンが活動電位中のLTCCの不活性化を加速することが重要である。そこで、脱分極電位でニフェジピンがLTCCの不活性化を加速する機序を解析した。 DHPはCa_v1.2 LTCCの膜電位依存性不活性化(VDI)を安定化してLTCCを抑制する。Ca_v1.2 LTCCは、少なくとも2つの(fast&slow)VDIを有する。Timothy症候群を生じる点変異(G436R)は、Ca_v1.2サブユニットのI-IIリンカー(L_<I-II>)に存在しVDIを障害する。そこで、野生型とこの変異を有するLTCCを介するホールセルBa^<2+>電流に対するニフェジピンの効果を比較した。 ニフェジピン非存在下では、同変異は-40及び0mVで、fast closed-及びopen-sate VDI(CSI&OSI)を障害したが、-100mVでのキネティックスに影響を与えなかった。野生型LTCCで、ニフェジピンは、-40及び0mVでそれぞれfast CSIとOSIを促進し、-40及び-100mVでそれぞれslowCSIを促進または安定化した。変異LTCCでは、ニフェジピンは、-40及び0mVでそれぞれ障害されたfast CSIとOSIを回復し、slow CSIに対しては野生型と同じ効果を示した。 したがってニフェジピンは、閾値以上の電位でL_<I-II>によりもたらされるfast CSI/OSIを促進する効果と、閾値以下の電位でslow CSI/OSIを促進または安定化する効果を有する。ニフェジピンによる活動電位短縮には、前者の作用が重要であると考えられた。
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