研究概要 |
研究目的:本年度は心肥大・心不全に伴う心室頻拍のトリガー発生に,一過性受容体電位(transient receptor potential, TRP)チャネルの中のTRPC6チャネルが関与しているかどうかについて検討することを目的とする。 研究成果:1) 32週齢の活性化型のG protein αqを一過性に強発現した心肥大・心不全誘発トランスジェニック(Gαq TG)マウスの心臓において、TRPC3とTRPC6の両タンパクの発現量が増加していることがわかった。2) K-Arpチャネル開口薬のニコランジル慢性投与は、Gαq TGマウスの心室性期外収縮の発生頻度を有意に減少したが、心室筋の両タンパク(TRPC3とTRPC6)の発現量を減少させることはできなかった。3) K-ATPチャネル開口薬のニコランジル急性投与は、Gαq TGマウス心室筋の活動電位幅を有意に短縮した。4) アンギオテンシンII typel受容体拮抗薬のオルメサルタン慢性投与は、Gαq TGマウスの心室性期外収縮の発生頻度を有意に減少し、心室筋のTRPC6タンパクの発現量を有意に減少させたが、TRPC3タンパクの発現量は、優位な抑制を示さなかった。 意義と重要性:本年度の研究から心肥大・心不全に伴う心室頻拍のトリガー発生には、心室筋のTRPC6タンパク発現量の増加が重要な役割を持っているが、TRPC6タンパク発現量の増加だけでは、心室頻拍のトリガー発生が引き起こされるとは限らないことが示唆された。これらの結果から、新しい抗不整脈薬の開発としてのTRPCチャネル阻害薬の可能性について新しい知見が得られた。
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