研究課題
研究の日的:これまでの研究からTRPCチャネルは細胞膜の伸展によって活性化されることが知られているが、不全心では左心室拡張末期圧の上昇があり、よって左心室の伸展が起こっている可能性がある。そこで本年度は、心室性期外収縮発生に対し、TRPC6タンパク量の増加に加えて何が必要かをについて圧負荷心不全モデルマウスを用いて検討する。研究成果:大動脈球部を狭窄させた圧負荷心不全マウスを作成し、6週後のBDF1マウスにおいて、体表面心電図上、心室性期外収縮発生は、正常(WT)マウスと比較して差がなかった。これに対し、32週齢の活性化型のG protein αqを一過性に強発現した心肥大・心不全誘発トランスジェニック(Gαq TG)マウスでは、心室性期外収縮発生が、有意に増加していた。上記圧負荷マウスは、正常マウスと比較して超音波M-modeにて測定した左室短縮率が有意に低下していたが、左心室拡張末期圧の上昇は明らかではなかった。圧負荷マウスおよびGαq TGマウスのランゲンドルフ心における左心室拡張期圧を上昇した時の心室性期外収縮の数は、WTマウスのランゲンドルフ心と比較して、有意に増加していた。さらに、圧負荷マウスとGαq TGマウスのランゲンドルフ心で左心室拡張期圧の上昇による心室性期外収縮の数増加を比較したところ、Gaq TGマウスで有意に増加していた。この心室性期外収縮の発生頻度の増加は、TRPCチャネル阻害薬(SK&F96365)の投与において、有意に減少した。意義と重要性:本年度の研究から、心肥大・心不全に伴う拡張末期圧上昇に伴う心室頻拍のトリガー発生(心室性期外収縮の発生)には、TRPCチャネルが関与していることが示唆された。この結果から、新規抗不整脈薬開発としてのTRPCチャネル阻害薬の可能性について新しい知見が得られた。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Circulation Journal
巻: 75 ページ: 2333-2342