研究課題/領域番号 |
21590278
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
石黒 和博 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 寄附講座准教授 (60432275)
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研究分担者 |
安藤 貴文 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (80378041)
後藤 秀実 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (10215501)
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キーワード | マクロファージ / T細胞 / 天然化合物 / 生薬 / 炎症 |
研究概要 |
Dehydrocorydalineによる細胞死誘導はIL-6の産生量に依存することが分かった。Lipopolysaccharide(LPS)の刺激により産生されるIL-6の量が少ないほど細胞死の誘導も軽度である。Cucurbit[7]urilは環状構造を有する化合物で内部にDehydrocorydalineを取り込むと励起波長350m、蛍光波長480nmの蛍光を示す。このCucurbit[7]urilを用いてDehydrocorydalineが活性化マクロファージに取り込まれる過程と細胞内局在を解明しようと試みたが感度が低く、いずれの解析にも不適当であることが分かった。 DehydrocorydalineはN^+を有するアルカロイドであるため活性化マクロファージでは、その作用部位である膜電位が上昇したミトコンドリアに取り込まれている可能性がある。そこでミトコンドリアに膜電位依存的に取り込まれることが知られている化合物が活性化マクロファージ特異的細胞死をDehydrocorydalineのように誘導できるかどうかを検討したところ、そのような作用を示す化合物は同定できなかった。 一方、これまで集めた生薬成分の中で文献報告が少なく、その薬理作用が不明である化合物を選び活性化T細胞のサイトカイン産生に与える影響を網羅的にスクリーニングした結果、ソウジュツに含まれるAtractylodinがIL-17の産生を強く抑制し、IFNγの産生を中等度抑制する一方でIL-4の産生には影響を与えないことが分かった。今後は生薬成分など天然化合物を用いた特異的サイトカイン産生制御療法の開発に取り組み、IL-17やIFNγなどのサイトカインが病態形成に関与している炎症疾患(炎症性腸疾患や関節リウマチなど)に対する新しい治療法の基盤としていく予定である。 また生薬成分ではないが腸内細菌で産生される中短鎖脂肪酸の中で量がもっとも多く、ビフィズス菌でも産生される酢酸がT細胞の活性化を制御する分子機序を解明した。すなわち(1)酢酸はtubulin alphaのアセチル化を誘導する。(2)tubulin alphaは転写因子NFATのN末端側に結合しNFATと核内輸送体importinbetaとの結合に対してアダプター分子として働く。(3)酢酸によるtubulin alphaのアセチル化はそのアダプター機能を妨げ、NFATとimportin betaとの結合を阻害する結果、NFATの核内移行を抑制する。
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