研究課題/領域番号 |
21590279
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大和谷 厚 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (30116123)
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研究分担者 |
春沢 信哉 大阪薬科大学, 薬学部, 教授 (90167601)
山本 浩一 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (40362694)
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キーワード | ヒスタミン / ヒスタミンH4受容体 / マクロファージ / 抗悪性腫瘍薬 / がん関連疲労感 / 炎症性サイトカイン |
研究概要 |
課題代表者は抗がん剤によって誘発される倦怠感(Cancer-Related Fatigue:CRF)の発症にはマクロファージが放出するサイトカインの中でも腫瘍壊死因子(TNF)-αが重要な役割を担っているとの仮説を立て、研究を行ってきた。ところで、血管拡張、血管透過性亢進などに関わる生体アミンのヒスタミンが持つ4つの受容体サブタイプ(H1~H4受容体)のうち、H4受容体は肥満細胞や免疫担当細胞で産生されるヒスタミンとともに免疫機能調節や炎症発症に関与しているとの報告がある。そこで本年度は、CRFが高頻度に発症するシスプラチン投与後のマウス活性化マクロファージ様細胞株(RAW264細胞)におけるTNF-α発現に対して、ヒスタミン合成酵素(HDC)阻害薬ならびにH4受容体遮断薬・作動薬を用いて検討をした。 シスプラチン(10^<-6>M)投与24時間後、RAW264細胞ではTNF-α発現が有意に増加し、この発現増加と並行して培養液上清中のヒスタミン濃度は増加した。HDC阻害薬を用いてヒスタミン産生を阻害しておくとTNF-α発現は増加したが、この増加はヒスタミンならびにH4受容体作動薬の投与によって抑制することができた。一方、H4受容体遮断薬をRAW264細胞に前処置しておくと、シスプラチンによるTNF-α発現作用をさらに上昇させた。これらの結果から、マクロファージ由来のヒスタミンはH4受容体を介してシスプラチンのTNF-α発現を抑制し、シスプラチンによって惹起される炎症症状を弱めることが示唆された。 本年度の研究成果は、マクロファージでのサイトカイン産生におけるヒスタミンならびにH_4受容体の役割を解明したとともに、H_4受容体をターゲットとしたCRFの新規治療薬の可能性を示唆するものであると考えられた。
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