研究概要 |
本研究では、マイクロダイアリシス法とラジオイムノアッセイを組み合わせることにより脳の特定部位からの生理活性ペプチドの一種であるサブスタンスP(SP)遊離の測定方法を新たに確立し、さらに末梢組織に侵害刺激を与え、脳の特定部位線条体からのSP遊離量を経時的に測定した。また、線条体ヘマイクロダイアリシス法を用いてSPの持続的な灌流を行うことにより、疼痛反応に及ぼす線条体でのSPの役割を検討した。0.4%ホルマリン(200μl, i. pl.)投与により2相性の疼痛反応が観察されたが、生理食塩水(200μl, i. pl.)投与では認められなかった。また、麻薬性鎮痛薬であるモルヒネ(10mg/kg, s.c.)、及び局所麻酔薬であるリドカイン(10mg/kg, i. pl.)前処置では、ホルマリン誘発性疼痛反応は、ほぼ完全に抑制された。ホルマリンによる侵害刺激時における線条体内のSP遊離量を経時的に測定した結果、ホルマリンを投与した後肢足蹠に対し、反対側の線条体から、投与前に比べ、投与2から3時間後にSP遊離量の有意な増加が観察された。本研究により、ホルマリン足蹠投与による侵害刺激はラット脳線条体からのSP遊離量を増加させること、さらに線条体内へSPを持続的に灌流することにより、ホルマリンによる疼痛反応行動が抑制されることが明らかとなった。 以上の結果から、疼痛制御機構において、線条体で遊離されるSPが重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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