Transient receptor potential ankyrin 1(TRPA1)は、わさびの成分であるallyl isothiocyanate(AITC)などの様々な化学刺激、機械刺激及び冷刺激、プロスタグランジンなどの炎症性メディエーターなどにより活性化される非選択的陽イオンチャネルである。TRPA1活性化による神経ペプチドのサブスタンスP(SP)の遊離機構について一次知覚神経の細胞体が存在するdorsal root ganglion(DRG)初代培養細胞を用いて検討し、さらにマウスを用いてTRPA1刺激に対する疼痛及び炎症反応測定による詳細な検討を行うことによって、疼痛形成、ならびに炎症形成に及ぼすTRPA1の役割を明らかにすることを試みた。 本研究によりTRPA1の活性化はDRG細胞における細胞外からのCa^<2+>流入に依存したp38MAPKの活性化を介し、SPを遊離することが示唆された。SPは軸索輸送により一次知覚神経終末から末梢組織および脊髄後角に遊離されることが示唆された。遊離されたSPは末梢組織では、浮腫、さらにTRPV1過敏化を介した炎症性の熱性痛覚過敏を引き起こすことが示唆された。また脊髄後角に遊離されたSPは痛みの伝達、さらに熱性痛覚過敏の伝達の役割を担うことが明らかになった。従って、本研究によりTRPA1活性化を介した炎症性疼痛反応にはp38MAPK 活性化を介したSPの遊離が大きな要因となっていることが示唆された。
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