研究課題
これまでの検討により、ミクログリアおよびマクロファージにおけるニコチン誘発カルシウム反応は酸性条件下・酸化ストレス下で増強されることが示された。ミクログリアを強力な炎症誘発物質であるリポポリサッカライド(LPS)で活性化すると大量の炎症性サイトカインTNFが放出されるが、ニコチン刺激によりTNF遊離は有意に抑制される。これらのことから、炎症時にはニコチン受容体の機能亢進が誘導され、傷害性の高い過剰な炎症から生体を守るための重要な役割を果たす可能性が示された。ミクログリアにおけるLPS刺激によるα7ニコチン受容体の発現・機能変化を調べる過程で、単離培養すると徐々に自発的細胞死を引き起こすミクログリ初代培養細胞がLPS刺激により著明に生存期間を延長維持することが分かった。さらに、LPSの濃度を上昇させると、ミクログリアの一部の集団は濃度依存的に速やかに細胞死を引き起こすことも示された。また、これらのミクログリアの生存維持と細胞死誘導はいずれも細胞外ATPにより増強されるが、その機序は異なり、生存維持にはATP受容体であるP2X7受容体が関与し、細胞死誘導にはATP代謝産物であるアデノシンが関与することも明らかとなった。α7ニコチン受容体刺激はLPSの反応を抑制するとともに、P2X7受容体機能を促進することも明らかにしている。従って、ニコチン受容体はこれらの受容体機能制御を介してミクログリアの炎症時の生存調節にも役割を果たす可能性が推測され、α7ニコチン受容体発現制御の解明とともに現在検討を進めている。
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