研究課題
リポポリサッカライド(LPS)によるミクログリアのToll様受容体4(TLR4)の活性化は大量の炎症性メディエータを放出させ、炎症性神経傷害を引き起こすことが知られている。ミクログリアに発現するα7ニコチン受容体刺激はイオンチャネルとは異なる代謝型シグナルを介してこの炎症性メディエータの放出を抑制し、神経保護的に働くことを報告してきた。さらに、LPSによるTLR4活性化はミクログリアの細胞死や生存維持にも大きな影響を与え、この調節にもα7ニコチン受容体が関与する可能性が示唆された。ラット脳ミクログリア初代培養細胞はアストロサイトから分離し単独培養を行うと徐々に細胞死をおこし48時間以内にはすべての細胞が死滅するが、LPSで刺激すると濃度依存的に速やかに細胞死を起す一方で、一部のミクログリアは数日間の長期にわたり生存し続けることが明らかとなった。LPS刺激後のミクログリアの振る舞いを位相差顕微鏡下でタイムラプス観察を行った結果、LPS刺激による細胞死を免れたミクログリアは著しく運動性を亢進させ、近傍の細胞死を起した細胞へ遊走し、活発に貪食する様子が示された。この貪食はP2受容体拮抗薬であるスラミンにより抑制されたことから、貪食に関わることが知られているP2受容体の関与が示唆された。α7ニコチン受容体刺激はP2受容体機能を高め、さらに貪食や生存維持にも促進的に関わることから、ミクログリアのα7ニコチン受容体は(1)ミクログリアからの炎症性メディエータの放出抑制、(2)炎症を誘発する死細胞やβアミロイドなどの貪食除去の促進、(3)保護的ミクログリアの生存維持など、極めて多彩な作用を介して神経保護に重要な役割を果たす可能性が示唆された。
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Neurochemistry International
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