アンジオテンシンII(Ang II)によって惹起される酸化ストレスや心血管系組織リモデリングに、他受容体との相互作用が関与することが考えられている。本研究では、炎症に重要な役割を果たすと考えられているLPS受容体であるToll-like receptor(TLR)-4のAngII昇圧機序及び組織リモデリングへの関連性を探ることを目的としており、本年度は、TLR-4のnatural mutantであるC3H/HeJマウスにAngIIを2週間慢性持続投与し、その影響を野生型マウスの場合と比較検討した。 明らかとなった結果は、以下の通りである。 (1)AngII慢性皮下投与による昇圧反応はHeJマウスで有意に抑制されており、野生型マウスで収縮期血圧が2週間後に148±8mmHgに達している一方、HeJマウスでは109±13mmHgであった。また別実験として行なわれたAngII急性静脈内投与による昇圧反応も同様にHeJマウスで減弱していた。(2)心臓のIL-6mRNAは、非刺激時には両群間に差はないものの、AngII慢性投与によって野生型マウスでは6.9倍に増加するのに対して、HeJマウスでは有意に抑制されていた。ただし、IL-10mRNAの誘導対しては両群に差はなかった。 これらのことから、TLR-4はAngIIによる慢性及び急性の血圧上昇維持機構に重要な位置を占め、またAngIIの炎症惹起因子としての性質にも一部関わることが考えられた。
|