研究課題
Differentiation-inducing factor(DIF:細胞性粘菌分化誘導因子)は細胞性粘菌が分泌する化学物質であるが、哺乳類の腫瘍細胞にも増殖抑制作用を持つことが報告されている。本研究は腫瘍細胞に対し強力な増殖抑制作用を持つDIF-1またはDIF様物質の抗悪性腫瘍薬としての臨床応用を目指すものである。この中で本申請課題では、DIF-1の生体内での動態を検討し、さらにそこからDIF-1を水溶性でかつ生体内で適度に分解を受けやすいプロドラッグ化するなどの新たな化学物質の検討・合成を行う。本年度はこのうち、以下の点についての検討を行った。1) マウスを用いたDIF-1の体内動態の解明を目指し、DIF-1をマウスに腹腔内および経日にて投与し、一定時間経過後にマウスを安楽死させ、心臓より採血した。採取した血液から、DIF-1を抽出しHPLCにて分析を行った。DIF-1は腹腔内および経口投与により血中に移行していたが、腹腔内投与では半減期が早く血中濃度の維持が困難であることが明らかとなった。2) ヌードマウスとマトリゲル(基底膜再構成基質)を用いたDIF-1の抗腫瘍活性評価を行った。(1) 腫瘍サイズへの影響と分子レベルでの解析ヒト腫瘍細胞をマトリゲルに混入し、ヌードマウス背部皮下に注入するという方法で腫瘍塊を形成させた。このときマトリゲルにDIF-1を加えたものでは腫瘍サイズが明らかに減少し、DIF-1がin vivoでも抗腫瘍作用を発揮することが明らかとなった。(2) 血管新生に対する影響のin vitroの系での解析を行い、DIF-1が血管内皮細胞の遊走能および管腔形成能を抑制することを見出した。
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J Pharmacol Sci. 112
ページ: 320-326