研究課題
Differentiation-inducing factor(DIF:細胞性粘菌分化誘導因子)は細胞性粘菌が分泌する化学物質であるが、哺乳類の腫瘍細胞にも増殖抑制作用を持つことが報告されている。本研究は腫瘍細胞に対し強力な増殖抑制作用を持つDIF-1またはDIF様物質の抗悪性腫瘍薬としての臨床応用を目指すものである。この中で本申請課題では、DIF-1の生体内での動態を検討し、抗腫瘍薬としてのDIFの有効性についての検討を行った。マウスへのDIFの投薬実験を行い、その血中濃度測定を行った。水溶性の低い薬剤の経口投与法として一般的な、薬剤をメチルセルロースに懸濁しマウスに経口投与を行う方法では、急激な血中濃度上昇を示し、濃度の維持が困難なことが明らかとなった。そこで、DIFが脂溶性の高い物質であることに着目し、大豆油に溶かして経口投与を行ったところ、緩やかな血中濃度の上昇と良好な血中濃度維持を示した。この結果に基づいて、DIFをcorn oilに溶かして腫瘍細胞を植え付けたヌードマウスへ経口投与を行ったところ、抗腫瘍効果が認められた。また、その作用機序について解明するために、タンパク質レベルでの解析を試みたところ、in vitroでの結果と同様に、DIFがサイクリンD1の発現を抑制することが関与していることが示唆された。以上の結果からDIFは生体内でも抗腫瘍作用を持ち、有望な新規抗腫瘍薬となる可能性が示唆された。また、新たに大腸がん細胞株に及ぼすDIFの作用機序についての検討も行い、DIFの新規ターゲット分子を見出した。
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Biochemical Pharmacology
巻: 83(1) ページ: 47-56
doi:10.1016/j.bcp.2011.10.001