研究概要 |
(研究目的)白金系抗がん剤であるオキサリプラチンや、タキサン系抗がん剤であるパクリタキセルは、副作用として末梢神経障害を高頻度で引き起こすことが知られており、臨床上大きな問題となっている。しかしながら、抗がん剤による末梢神経障害の発現機序の詳細は不明であり、有効な予防策や治療法は国内外において未だに確立されていない。本研究では、抗がん剤による末梢神経障害のラットモデルを作製し、予防法や治療法の確立に関する検討を行った。 (研究方法)オキサリプラチン(OXP, 4mg/kg)を週2回、4週間ラットに反復投与した際に生じる末梢神経障害について、機械的アロディニア(終痛)をvon Frey試験、低温知覚異常をアセトン試験にて評価した。 (研究成果)OXPをラットに投与すると投与開始1週目からアセトン逃避反応回数が顕著に増加し、その低温知覚異常は4週目まで継続した。von Frey試験では、OXPの投与開始から3週目以降において、疼痛閾値が有意に低下し、機械的アロディニアを呈した。一方、メキシレチン(MXL, 10-100mg/kg)を経口単回投与すると、100mg/kg MXL投与後60分において、OXPによる低温知覚異常が有意に抑制され(コントロール群:1.06土0.14回,OXP群:2.31±0.35回,OXP+MXL群:1.06±0.17回)、その効果はMXL投与180分後には消失した。加えて、MXL(30-100mg/kg)は、OXPによる疼痛閾値の低下に対して保護作用を示し(コントロール群:9.18士0.84g,OXP群:5.18±0.39g、OXP+MXL(100mg/kg)群:9.38±0.95g)、その作用はMXL投与120分後には消失した。本検討により、OXPによるラット末梢神経障害に対して、MXL投与は一過性の保護作用を示すことが明らかとなった。
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