研究概要 |
(研究目的)白金系抗がん剤のオキサリプラチンやタキサン系抗がん剤のパクリタキセルは、副作用として末梢神経障害を高い頻度で引き起こすことから、臨床上大きな問題となっている。しかしながら、抗がん剤による末梢神経障害は発現機序の詳細が不明であり、有効な予防策や治療法は国内外において未だに確立されていない。 本研究では、昨年度の研究において作製した抗がん剤による末梢神経障害評価モデルを用いて、末梢神経障害の発現機序の解明ならびに対策法の確立に関する検討を行った。 (研究方法)オキサリプラチン(OXP,4mg/kg)を週2回、4週間ラットに反復投与した際に生じる末梢神経障害について、機械的アロディニア(疼痛)をvon Frey試験、低温知覚異常をアセトン試験にて評価した。また、蛋白発現量の変化はウエスタンブロット法にて確認し、神経細胞の組織学的評価にはトルイジンブルー染色法を用いた。 (研究成果)OXPの反復投与により機械的アロディニアを発現したラットの脊髄では、NMDA型グルタミン酸受容体NR2Bサブユニットの発現量が有意に増加しており、NR2B選択的阻害薬であるRo25-6981や、NMDA受容体拮抗薬であるメマンチンやMK801を髄腔内に投与すると、OXPによる機械的アロディニアが一過性に抑制された。同様に、NR2Bの阻害作用を有するイフェンプロジルの経口投与によっても、OXPによる機械的アロディニアは一過性に抑制された。一方、OXPを投与したラットでは投与開始から4週目において、坐骨神経に軸索の変性が認められたが、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液であるノイロトロピンを反復投与することで、OXPによる坐骨神経の軸索変性ならびに機械的アロディニアの発現が、いずれも顕著に抑制されることが明らかとなった。
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