研究概要 |
(研究目的)白金系抗がん剤のオキサリプラチンやタキサン系抗がん剤のパクリタキセルは、副作用として末梢神経障害を高頻度で引き起こすことから、臨床上大きな問題となっている。しかしながら、抗がん剤による末梢神経障害は発現機序の詳細が不明であり、有効な予防策や治療法は国内外において未だに確立されていない。 本研究は、昨年度までに作製した末梢神経障害評価ラットモデルおよび研究成果を基盤として、抗がん剤による末梢神経障害発現機序の詳細な解明ならびに、対策法の確立を目指して検討を行った。 (研究方法)オキサリプラチン(OXP,4mg/kg)を週2回4週間ラットに腹腔内投与し、末梢神経障害は、von Frey試験を用いた機械的アロディニア(疼痛)の評価と、アセトン試験による低温知覚異常の評価にて行った。カルシウム拮抗薬および牛車腎気丸は、単回投与あるいはOXP投与と同時に反復投与を行った。 (研究成果)OXPを投与したラットの脊髄後根神経節(DRG)において、温度感受性チャネルTRPM8の発現量が有意に増加することが明らかとなった。また、OXPによる低温知覚異常およびTRPM8の発現増加には電位依存性カルシウムチャネルを介した細胞内へのカルシウムイオン流入や、転写因子NFATの核内移行が関与することが示された。加えて、カルシウム拮抗薬の投与にょり、OXPによる低温知覚異常およびTRPM8の発現増加は有意に抑制された。一方、牛車腎気丸を投与すると、OXPによる末梢神経障害が一時的に緩和される一方で、牛車腎気丸を反復投与してもOXPによる坐骨神経の変性や機械的アロディニアを回避するまでには至らないことが明らかになった。
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