研究概要 |
(1)ラットのアキレス腱から初代培養した線維芽細胞を用い、線維芽細胞に発現するNa^+/Ca^<2+>交換輸送体(NCX)mRNA発現をreal time RT-PCR法で同定した。3種類のNCXのうちNCX1が最も多く発現していた。NCX2の発現は見られず、NCX3の発現はわずかであった。NCX1のアイソフォームをさらに調べると、NCX1.3とNCX1.7が検出できた。(2)線維芽細胞のNCX1の機能を調べるためFura-2を細胞内に負荷し、細胞内Ca^<2+>濃度を測定した。細胞外液のNa^+濃度を140mMから、30mM,10mM,0.3mMと徐々に低くすると、Na^+濃度が低いほど、細胞内Ca^<2+>濃度が上昇した。この外液Na^+濃度依存性の細胞内Ca^<2+>濃度上昇は、NCXの選択的阻害薬であるKB-R7943とSEA0400で抑制された。50%抑制を示す濃度は、KB-R7943が4.1μM,SEA0400が0.9μMであった。これらの阻害薬は、静止状態の細胞内Ca^<2+>濃度も同様のIC_<50>値で低下させた平均細胞内Ca^<2+>濃度は、168nM,平均膜電位は-15mVであった。これらの結果は線維芽細胞ではNCXがCa^<2+>流入方向に働いていることを示唆する。(3)NCXが線維芽細胞の遊走能に関与しているかを創傷治癒モデルのスクラッチ法で調べた。NCX阻害薬は線維芽細胞の遊走を遅め、創傷治癒能を抑制した。このことから、線維芽細胞のNCXは創傷治癒機能に関与していると結論した。
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