初年度である2009年度においては、微小血管の収縮応答を検出するため、はじめに腎臓内部を走行する内径数十マイクロメートルの微小血管である葉間動脈をマウスより摘出し、その発生張力変化を検出することを試みた。測定のために、従来型の張力測定装置を改良・高感度化し、微小血管の収縮応答を良好に検出する条件を設定した。これにより、これまで腎臓外部に位置する「腎動脈」の収縮応答から推定するだけであった腎臓内部の葉間動脈における収縮応答性を生体内に近い条件下で検出することに成功した。また、葉間動脈における測定に当たっての適切な静止張力レベルとして400 microNを設定した。この方法により、腎葉間動脈が50 mM KC1誘発の収縮を引き起こすだけでなくphenylephrine、thromboxane A2、prostaglandin F2αおよびangiotensin-IIにより持続的な収縮を引き起こすことを見いだした。同様に測定を行った腎臓外部の腎動脈における収縮応答では50 mM KC1誘発収縮と比較して1.5倍程度の上記アゴニスト誘発収縮が認められたが、葉間動脈では50 mM KC1誘発収縮とほぼ同程度であり、両者の収縮反応性が異なっていることも示唆された。さらに糖尿病病態下における高血糖条件下を想定し、細胞外糖濃度が上昇した条件下において微小血管収縮応答がどのような影響を受けるかについて検討を行ったところ、腎動脈では糖濃度依存的に血管収縮応答が亢進したが、腎葉間動脈では細胞外糖濃度上昇の影響はほとんど認められなかった。これらについても血管部位、あるいは腎臓内外の血管による応答性の相違と考えられ、これらの違いが生じる原因と、糖尿病病態下における変化についても2010年度にて検討を進める予定である。
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