研究課題/領域番号 |
21590290
|
研究機関 | 城西大学 |
研究代表者 |
野部 浩司 城西大学, 薬学部, 准教授 (30276612)
|
研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 糖尿病 / 合併症 / 腎症 / 血管 / 血管平滑筋 / 腎動脈 / 収縮 |
研究概要 |
本申請課題は、糖尿病患者の QOL を著しく低下させることが知られている合併症に関して、その発症原因が極めて微小な血管の機能異常であることを背景とし、従来では試みられていない微小血管や腎臓内部の血管における機能異常メカニズムを明らかにすることである。 平成 21 年度および平成 22年度の本課題研究において、微小血管の張力測定システムを構築した。さらに、正常マウスの典型的微小血管とされている腸間膜動脈のアゴニスト誘発の張力応答を比較することにより、一般的な検討で用いられてきた腸間膜動脈第一分枝 (MA1) が大動脈と類似した薬物応答性を示し、MA1 が分岐した第二分枝 (MA2) が微小血管としての性質を色濃く示すことを見いだした。平成23年度においては、自然発症 II 型糖尿病モデルマウス (ob/ob mouse) が持続的な高血糖を示し、この時 MA2 収縮が著しく低下していることを見いだした。この収縮低下現象は、血管収縮のカルシウム感受性を制御するとされる rho および rho kinase を介する経路の異常が一因となっていることを明らかとした。特に rho kinase の発現低下が直接的な原因と思われた。このような糖尿病病態下における血管収縮応答変化は、MA2 のみで認められる現象であり、大動脈と類似した反応性をしめす MA1 では全く認められなかった。これら MA2 に関する知見は、European Journal of Pharmacology に掲載された。 平成24年度においては、糖尿病性腎症を対象とし、腎臓内部の微小な血管の機能障害が糖尿病にて引き起こされるか否かについて検討を行った。これにより腎臓内部で糸球体への血流に大きな影響を与える腎葉間動脈の収縮応答が変化していることを見いだした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に沿って研究は進められている。すでに、微小血管張力測定システムの構築と糖尿病モデルマウスにおける収縮応答変化の検出に成功しており、いくつかの微小血管にて収縮機能異常を見いだしていることから、今後はそのメカニズムの解明と研究成果の公表準備に着手することができる。
|
今後の研究の推進方策 |
一般的な微小血管の機能障害とそのメカニズムに関しては、糖尿病モデルマウス腸間膜動脈を用いて平成24年度までにほぼ検討が終了している。現在は、昨年度から引き続いて糖尿病性腎症の原因となる腎臓内部の微小血管(腎葉間動脈)収縮応答変化について検討を続けている。既に、糖尿病を想定した条件下にて血管収縮応答の変化が見いだされており、今後は、このメカニズムについて薬理学的、生化学的検討を進める予定である。 さらに、本年度が研究期間の最終年度に当たるため、蓄積した膨大なデーターを再度解析・検討し、それを公表するための準備を進める予定である。これまでに腸間膜動脈に関する知見は、European Journal of Pharmacology に掲載されているため、本年度は特に腎葉間動脈に関して投稿するための準備を進める予定である。 最終的に、研究期間内に研究計画にある全ての検討を行う予定である。
|