(1)セリンラセマーゼノックアウト(SRR-KO)マウスのD-セリン濃度測定 SRR-KOマウスの脳内D-セリン濃度を野生型マウスと比較した。D-セリンは野生型マウスの大脳皮質、海馬及び線条体に多く存在していたが、SRR-KOマウスでは野生型マウスの約10%程度に減少していた。一方、SRR-KOマウスのL-セリン濃度は野生型マウスの海馬及び線条体で有意に増加していた。以上の結果から、SRR-KOマウスは統合失調症との関連が知られている大脳皮質や海馬などのD-セリン濃度が激減したマウスであり、NMDA受容体機能が低下している可能性が示唆された。 (2)統合失調症の新規モデル動物としての評価 野生型マウスとSRR-KOマウスにメタンフェタミンを投与し、移所運動量及び常同行動に対する影響を検討した。メタンフェタミン(9mg/kg)を投与したところ、SRR-KOマウスの常同行動スコアが野生型マウスと比較して有意に増加した。また、メタンフェタミン投与によってSRR-KOマウスの移所運動量が野生型マウスと比較して有意に減少した。以上の結果から、SRR-KOマウスのD-セリン濃度の減少、すなわち大脳皮質や海馬のNMDA受容体機能の低下によって、メタンフェタミンによる常同行動が悪化した可能性がある。
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