研究概要 |
siRNA (short interfering RNA)による標的遺伝子発現抑制を基盤とした難治性疾患(癌・エイズ等)への治療応用が期待されているが、ある特異的な塩基配列モチーフ(Interferon-inducible sequence, IIS)を有するsiRNAが塩基配列特異的にIFN応答を起こすことが報告されており、未解決な問題点も多い。本課題はsiRNA-IIS (IFNを誘導する特異配列を持っsiRNA)をマウス個体に全身性に投与してもIFN応答が起きないような安全でかつ臨床応用可能なDrug delivery system(アテロコラーゲンによる)の開発を目指す。以下、本年度の成果を示す。 Iマウス個体レベルでのIFN応答の解析 3種類のdelivery vehicle ((1)アテロコラーゲン、(2)Invivofectamine、(3)高分子ポリマーPEI)について、siRNA-IISと複合体を作り、マウスに尾静脈経由で投与した。上記(1)又は(3)のsiRNA-IIS複合体において、投与後、1, 3, 6, 12, 24時間後のマウスから採血し、血清中IFN-α濃度を測定したところ、投与6時間後にIFN-α誘導のピークが見られ、その後急激に血中IFN-αが消失した。IFN-βも、IFN-αと類似の結果を示した。(1)のアテロコラーゲンと複合体化したsiRNA-IISは、全くIFN誘導を示さなかった。本IFN誘導は、BALB/cマウスの系統(C57BL/6Jに比し)で顕著であった。IFN-γやFN-λの誘導は、(1)~(3)いずれのvehicleでも観察されなかった。 II末梢血単核球細胞(Periheral blood mononuclear cell,PBMC)におけるIFN応答 上記(1)~(3)のdelivery vehicleと複合体化したsiRNA-IISをヒト全血から単離したPBMCに添加したところ(in vitro実験)、in vivoの結果を裏付けるが如く、(2)と(3)のvehicleの揚合、IFN誘導を観察し、(1)のアテロコラーゲンvehicleでは、I型IFNが誘導されないことを明らかにした。
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