膵β細胞においてインクレチン/cAMPシグナルによって活性化されたEpac2/Rap1シグナルの標的分子の同定を試みたところ、低分子量Gタンパク質RhoファミリーのRacに対するGEFであるTiam1を同定した。Epac2/Rap1を介するインスリン分泌におけるTiam1の関与を検討するために、Tiam1に対するshRNAを作製した。Tiam1の発現を抑制した条件下、Epac特異的cAMPアナログでインスリン分泌細胞株MIN6を刺激したが、インスリン分泌増強はコントロールshRNAを導入した細胞とほとんど変わらなかった。さらにTiam1特異的阻害剤を用いて同様の実験を行ったが、インスリン分泌増強の低下は認められなかった。したがってTiam1はEpac2/Rap1によるインスリン分泌増強に関与しないと考えられた。 また、cAMP/Epac2シグナルが細胞骨格を制御することでインスリン分泌を増強するかを検討した。cAMPアナログ8-bromo-cAMPによって活性化される分子を検討したところ、細胞骨格制御に関与するRhoファミリーの分子を同定した。この分子に対するshRNAをMIN6細胞に導入し、cAMP刺激によるインスリン分泌増強を検討したところ、有意に低下していた。さらに、この分子の下流分子の探索を行ったところ、cAMP依存性に結合する分子を同定した。以上のことから、cAMPシグナルはRhoファミリーの分子および下流シグナルを活性化することで細胞骨格を制御し、インスリン分泌を増強することが示唆された。
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