(1)Epac2/Rap1を介したインスリン分泌制御機構の解明:昨年度同定されたRap1の標的分子のうち、Tiam1以外の候補分子に対するshRNAをインスリン分泌細胞株MIN6に導入し、Epac特異的cAMPアナログ8-CPT-2Me-O-cAMPによるインスリン分泌増強を検討したが、抑制されなかった。今回検討しなかった分子がRap1の標的分子であると考えられる。 (2)cAMP/Epac2によって活性化されたCdc42やRacによるインスリン分泌制御の解析:膵β細胞においてcAMPやグルコース刺激によって活性化されたRhoタンパク質Cdc42の標的分子として同定された分子はアクチンの重合に関与するが、この分子に対するdominant negative変異体を膵島、膵β細胞株に導入し、インスリン分泌増強に関与するかを検討したところ、有意に抑制された。また膵β細胞株を用いた灌流実験を行ったところ、2相性インスリン分泌増強の第2相が特異的に抑制されていた。さらにcAMP/Epac2シグナルはF-アクチンの脱重合に関与する分子を活性化し、その変異体はインスリン分泌増強を抑制することから、cAMP/Epac2によるアクチンの重合、脱重合のバランスの制御はインスリン分泌において重要な役割を果たすことが示唆された。 (3)個体レベルでのEpac2を介したインクレチン作用の解明:全身性にEpac2を欠損したマウスにおいて、耐糖能障害はほとんど認められなかったため、膵β細胞で特異的にEpac2を欠損させたマウスを作出した。このマウスを用いて個体レベルの実験ができるように現在、繁殖をさせているが、事前にEpac2欠損マウスから膵島を単離して、インクレチンで刺激し、インスリン分泌増強を検討したところ、野生型マウスに比し有意に抑制されていた。またインクレチン以外のインスリン分泌促進薬と組み合わせても、インスリン分泌増強は有意に抑制されていた。したがってEpac2はインクレチンによるインスリン分泌増強に重要であることが明らかになった。
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