これまでの研究にて、海馬神経細胞においてスフィンゴシンキナーゼ(SPHK)によって生成したスフィンゴシン1リン酸(S1P)がオートクライン的に細胞表面のS1P受容体を活性化することにより、神経伝達物質の放出が促進されることを見いだし、報告してきた。本研究ではさらにその知見についてin vivoでの検証を加えた。すなわち、記憶・学習に深く関わることが知られている海馬CA3領域での長期増強(LTP)が、SPHK1ノックアウトマウスにおいては認められないこと、それに伴い空間学習能力が低下していることを見いだして、報告した。 また、海馬神経細胞初代培養を用いてそのシナプス形成をin vitroで検討したところ、siRNAを用いてSPHK1をノックダウンすることにより、プレシナプスとポストシナプスによるシナプス形成が減弱することも見いだしている(未発表データ)。 以上の結果は、SPHK1-S1P受容体系に作用する薬物により大脳機能を調節できる可能性を示唆するものであり、今後の応用という点で極めて重要である。
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