研究課題
N-アシルエタノールアミン(NAE)は長鎖脂肪酸とエタノールアミンが縮合した一連の化合物であり、動物組織に少量ではあるが普遍的に存在する。いくつかの受容体を介して種々の生物活性示すことで注目されているが、生体内での役割については不明な点が多い。NAEの体内レベルは酵素的に調節されていて炎症時や組織傷害時に著しく増加する。本研究では、NAEの生合成・分解に関与する酵素群についての未解決の問題に取組み、NAEの生理的及び病態生理学的意義を明らかにすることを目的とした。N-アシルトランスフェラーゼはホスファチジルエタノールアミンのアミノ基に別のグリセロリン脂質分子からアシル基を転移することによりNAEの前駆体であるN-アシルポスファチジルエタノールアミン(NAPE)を生成する酵素である。我々はこれまでに、「H-rev107がん抑制遺伝子ファミリー」に属する複数のタンパク質がN-アシルトランスフェラーゼを有することを報告してきた。平成22年度は、同ファミリーメンバーのひとつでこれまで酵素活性の報告がなかったA-Clについても、ホスホリパーゼA_1/A_2活性及びリゾリン脂質O-アシルトランスフェラーゼ活性とともにN-アシルトランスフェラーゼ活性を有することを見出した。また、NAPEからNAEを生成するNAPE水解ホスホリパーゼD(NAPE-PLD)の遺伝子欠損マウスを用いてLC-MS法により脂質分析を実施し、種々のN-アシル鎖を有するNAPE分子種のみならず、それらのリゾリン脂質分子種の脳内レベルも野生型と比較して顕著に増加していることを明らかにした。このことから同欠損マウスの脳では、脱アシル化反応を介するNAPE-PLD非依存性経路によりNAEが生成することが確認された。
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