研究概要 |
gp130ファミリーのサイトカインは、標的細胞の分化、増殖や細胞の生死という細胞運命の決定や発生に重要な役割を担うものの細胞老化における役割についてはあまり明らかにされてはいなかった。ヒト正常二倍体細胞であるTIG3細胞における分裂老化に際して、gp130シグナル系が常に活性化されていたことから、細胞老化におけるgp130シグナルの役割を解析した。TIG3細胞をIL-6と可溶性IL-6受容体で刺激してgp130シグナルを活性化すると、細胞の増殖低下、老化特異的β-ガラクトシターゼ活性上昇、CDK4阻害分子の発現を伴う細胞老化が早期に誘導された。刺激4日目以降で活性酸素種(ROS)産生が増加し、以降持続的にROS産生が亢進した。抗酸化剤NACの前処理にてROS作用を抑えるとDNA障害に伴うピストンH2A.Xのリン酸化が抑制され、老化も抑制された。shRNAを用いたp53のノックダウンがgp130シグナル刺激によるTIG3細胞の老化誘導が抑制したこととあわせ、IL-6刺激での老化誘導には、ROS産生亢進、DNA傷害、p53の活性化が重要であると考えられた。さらに優性抑制型変異体を用いたStat3役割の解析により、Stat3がIL-6刺激におけるROSの産生亢進、IL-1α,IL-1β,IL-6,CXCL8等のmRNA発現並びに細胞老化にも重要であることがわかった。これらのことから、gp130シグナルで活性化されるStat3が、何らかの機序でROS産生を招き、つづくDNA傷害、p53の活性化が老化をもたらし、同時に、Stat3が老化に伴うサイトカイン、ケモカインの産生にも関わり、その結果、総体として細胞老化が強く誘導されるものと考えられた。
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