研究概要 |
1)STAT3による転写伸長機序と転写伸長に関わるキナーゼ群の役割について。 STAT3依存的転写伸長が、CDK9を90%抑制条件においても何ら抑制されることがないため、いかなるキナーゼが主に働いているのかを決定することが重要である。CDK9の作用に相当する働きをするキナーゼを探索する中で、CDK12とCDK13の役割を検討した。またSuper elongation complex(SEC)はこれらキナーゼ群の基質となるとともにキナーゼをリクルートすることに関わる可能性があることから、SECに含まれるELL2,AFF4もそれぞれノックダウンしたHepG2細胞株を作成した。IL-1刺激下でのNFκB-依存的な標的遺伝子群の発現を対照として、IL-6刺激下でのSTAT3依存的遺伝子発現におけるそれぞれの分子の役割を検討した。標的遺伝子としては、いずれの経路によっても活性化されるsocs3とsaa1を用いた。NFκB依存的な転写伸長とCTD Ser2リン酸化には、CDK9,AFF4,ELL2が重要であったが、STAT3依存的なsocs3遺伝子発現では、CDK9,AFF4,ELL2の役割は限定的であったが、saa1発現においては、AFF4が重要であった。CDK12,CDK13ともsocs3遺伝子プロモーターと3'ORFにSTAT3依存的にリクルートされることを確認したが、これらキナーゼや調節サブユニットであるCyclin Kのノックダウンも遺伝子発現の低下を招かないことから、なお未知のキナーゼの関わりが考えられた。SEC複合体が探索のヒントを与えると期待している。 2)STAT3 Ser727リン酸化の役割を追求した。このリン酸化はSTAT3活性の持続を短くすることに作用し、機序として何らかのSer727リン酸化依存的におこるSTAT3の修飾などを通じてTC45という核内で働くチロシンフォスファターゼの作用を増強することでTyr705の脱リン酸化を促進することを明らかにした。従って、Ser727リン酸化は、転写活性の増強作用に加えて、活性の持続を短くする作用が明らかとなった。 3)STAT3の作用機序について検討しうる系として、ヒト線維芽細胞を用いた解析を行った。
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