研究概要 |
本研究の最終目的は、赤血球膜バンド3タンパク質が媒介する陰イオン透過の分子機序解明である。本年度(平成21年度)は、電子線ならびにX線を用いてバンド3タンパク質の膜内構造解析を試みるため、高純度・高濃度なバンド3タンパク質の精製条件の検討を行った。その結果、非常に高純度な精製タンパク質を得ることができた。 この精製標品を、連携研究者である理化学研究所平井研究室、京都大学岩田研究室にて二次元および三次元結晶構造解析に用いた結果、二次元結晶も三次元結晶もそれぞれの解析に耐えうる結晶が日常的に得られるようになった。なかでも二次元結晶解析では、当初はチューブ状の結晶で18Åの分解能で解析でき、その結果60×110×70Åのダイマー構造が得られ、J.Struct.Biol.(169:406-412,2010)に発表した。さらに改良の結果、7.5Åの分解能で立体構造を解析することができた(J.Mol.Biol., 397:179-189,2010)。その結果、驚くことに、バンド3の高次構造はすでに立体構造が明らかなCIC型塩素イオンチャンネルの構造と類似していることが明らかとなった。この類似性から、イオン輸送体の構造と機能解析、イオン輸送機構の進化の観点において重要な知見を得ることが可能となり、これまで報告者らが行ってきたタンパク質化学的実験結果を加味しながら、さらなる解析を進行中である。 さらに、三次元結晶構造解析に耐えうる質の高い結晶もできつつあり、二次元構造解析と並行してプロジェクトを進行中である。
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