研究概要 |
本研究の最終目的は、赤血球膜バンド3タンパク質が媒介する陰イオン透過の分子機序解明である。本年度(平成22年度)は、高純度・高濃度なバンド3タンパク質の精製条件の検討を行った。その結果、非常に高純度な精製タンパク質を得るプロトコールを作成することができた。 この精製標品を、連携研究者である理化学研究所平井研究室、京都大学岩田研究室にて二次元および三次元結晶構造解析に用いた結果、二次元結晶も三次元結晶もそれぞれの解析に耐えうる結晶が日常的に得られるようになった。なかでも二次元結晶解析では、7.5Åの分解能で立体構造を解析することができ、複数の論文にその成果を発表した(J.Mol.Biol.,397:179-189, 2010、Biochem.Cell Biol.,89:148-156, 2011)。その結果、バンド3の高次構造はすでに立体構造が明らかなClC型塩素イオンチャンネルの構造と類似していることが明らかとなった。この類似性から、イオン輸送体の構造と機能解析、イオン輸送機構の進化の観点において重要な知見を得ることが可能となり、これまで報告者らが行ってきたタンパク質化学的実験結果を加味しながら、さらなる解析を進行中である。 また、京都大学で行っている三次元結晶構造解析は、抗体との共結晶を得ることができた。現在こちらの結晶構造解析も進行中であり、間もなく結果が得られる予定である。同時に宇宙ステーション「きぼう」にて結晶生成を試みたが、アグリゲーションによる沈殿のみが確認された。この実験についても、もう一度条件検討を行って、来年度以降再挑戦する予定である。
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