研究課題
【1】ABCB1欠損マウスの分子病理解析と疾患発症メカニズムの解明:一昨年度、ABCB1欠損マウスでは、腫瘍が特定のサイズ段階に留まることを見出した。腫瘍形成過程におけるABCB1の作用点を明らかにするために、遺伝子発現プロファイルの比較検討を行ったが、個体ごとに腫瘍をプールして個体間比較を行ったために、腫瘍間の発現差異が混在している懸念があった。そこで平成22年度は、個々の腫瘍を2分割し、一方を詳細な病理学的評価に、他方を発現解析に用いることとした。その結果、(1)腫瘍とともに筋層の混入した検体が3割で見られ、(2)1割の検体で病理学的悪性度が異なる例が確認されたので、この2点をそろえて個体間比較を行うことにより、信頼性の高い解析が可能となった。網羅的遺伝子発現プロファイルの解析から、特定のサイズ段階でERBB2とunspecific monooxygenaseを中心としたパスウェイの発現亢進を見出し、新しいがん治療の標的を提示できる可能性が得られた。【2】相互作用タンパク質の同定と機能修飾の解明:相互作用検出のためにスプリット・ユビキチン法を開始したが、(1)高分子膜タンパク質であるABCトランスポーターの酵母における発現を検出することが予想以上に難しいこと、(2)陽性クローンの出現頻度が極端に低いこと、が問題となった。しかしながら、(1)培養と酵母の破砕・溶解条件の検討により発現検出の困難を克服し、(2)bait構築体の安定発現株を樹立したのちpreyライブラリーを導入することでヒトABCC2発現の難しさを克服した。さらに、(3)形質転換効率が高いサブクローンをスクリーニングにて選別することにより陽性クローンの出現頻度を上昇させることに成功し、(4)cDNAライブラリー導入後、段階的に選択マーカーを増やすことにより、一段階では得られない「弱い相互作用」を検出できることを明らかにした。
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Pharm Res
巻: 27 ページ: 832-840