外界に接している臓器で異物の進入を先ず阻む生体フロントラインの防御機能の全容を明らかにして、その機能破綻により発症するがん、炎症性腸疾患などに対する新しい予防、診断と治療法開発へ繋げる事を目的として、下記の成果を上げた。 【1】ABCB1欠損マウスの分子病理解析と疾患発症メカニズムの解明:ABCB1欠損マウスでは腫瘍は特定のサイズ段階に留まり先に進めないこと、網羅的遺伝子発現プロファイルの比較検討により、特定のサイズ段階前後に特異的な発現パターン、すなわちERBB2とunspecific monooxygenaseを中心としたパスウェイの発現が亢進していることを見出した。さらに、定量PCRによる発現変化の確認と、候補遺伝子の導入・機能解析により、ABCB1の欠損による増殖停止の作用点を探ることを試みた。その結果、マイクロアレイにおける発現量比は、CyBR Greenを用いたリアルタイムRT-PCRによって、定量的にも大変よく再現されていることが確認された。また、候補遺伝子のうち発現変化が大きい6遺伝子について完全長cDNAを単離し、pEGFP-N3ベクターを用いた発現構築体を作製して大腸がん細胞株に導入したところ、腫瘍サイズの増大に伴って発現が低下する遺伝子群のいくつかについては安定形質転換細胞株が樹立できないことが分かり、がん抑制的な作用が想定された。 【2】相互作用タンパク質の同定と機能修飾の解明:臨床的意義の大きいABCC2とABCB1をモデルタンパク質としてとして、スプリット・ユビキチン法を開始しこれまでに、振盤機の種類と酵母の破砕・溶解条件の検討により高分子膜タンパク質であるABCトランスポーターの酵母における発現検出の困難を克服し、培養条件の検討とサブクローンの選別により、低い形質転換効率の問題を解決した。さらに、単離された候補タンパク質とABCB1、ABCC2タンパク質との結合様式および相互作用モチーフをプルダウン・アッセイにて解析するために、GateWayシステムを用いて構築体作製の準備を調えた。
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